「競争優位は「川下」でつくられる」のまとめ
Harvard Business Reviewの
「When Marketing Is Strategy マーケティングが戦略になる時代
競争優位は「川下」でつくられる」を読んでのメモ
「顧客のために他に何ができるか」
川上 調達 生産 物流
川下 顧客のコストやリスクを減らすための活動
例
<コカ・コーラ>の買い方
スーパーやディスカウントストアでは、24缶のパックの1つとして購入され 1缶あたり24セント
夏の暑い日に公園にいて喉が乾いたら、1缶当たり2ドルの冷えたコーラを自動販売機で買う
700%の価格プレミア 24セント → 2ドル
商品入手の利便性が向上したこと顧客が重視すること
24缶パックを忘れずに買っておき、1缶だけ取り出して残りをしまう場所をさがし
その1缶を一日中持ち運び、喉が乾くまでどうやって冷やしておくか考える、必要がないこと特定の消費者環境に即して商品を届ける
ビジネス戦略上の問い
「他に何がつくれるか」 から 「顧客のためにほかに何ができるか」 へ
ビジネスの中心は「顧客と市場」であり、「工場でも製品」ではない戦略の原則
原則1
競争優位の源泉・中心は、企業の外にある
競争上の強みは時間とともにライバルに浸食されるのではなく、むしろ経験と知識によって蓄積される。
原則2
競争の方法は時間とともに変化する。
製品の向上ではなく、顧客のニーズであり、彼らの購買基準を踏まえたポジショニングである。
製品・サービスを市場にどう認識させるか、誰を競走相手にするかを企業は選ぶことができる。原則3
市場のスピードや進化を決めるのは、製品・技術の改善でなく、顧客の購買基準の変化ブランディングの世界の古典的な思考実験
コカ・コーラの世界中の有形資産が一夜にしてなくなった場合
コカ・コーラのことを、世界中の人の記憶から一夜にしてなくなった場合
どちらが、大きな問題となりうるか。消費者とブランドのつながりが失われたほうが、川上の全資産の喪失よりも痛手が大きい。
市場でのつながりを確立・強化すると「定着」が生じる。
ライバルが同程度またはそれ以上の価値を提供しても、顧客や協力企業は乗り換えない。(乗り換えられない)ブランドに何百万、何十億という人々がロイヤルティを持ち続ける選択をしたら
それこそが競争上の強みとなる。顧客の声に耳を傾けることは必須なのか
顧客が口にする要望に応えるのではなく
顧客が求めるものを自社で規定し、彼らの「購買基準」を定めることスティーブ・ジョブスがiPadの開発に至った市場調査に聞かれて
そんなものはない。自分がほしいものを知るのは消費者の仕事ではない。自社のカテゴリーにおける「性能の基準」を規定する企業が市場のリーダーとなっている
ボルボ: 安全に関する基準を定める
ファブリーズ: 顧客が「清潔な家」をどのように認識するかを再定義
ナイキ: 顧客に「自分の力を信じる」をいう基準を示す
川下の活動における戦略目標
消費者がさまざまな購買基準の相対的重要性をどうとらえるかに影響を及ぼし
新しく魅力的な基準を導入することである。競争優位は時間とともに損なわれるのか
川上: ライバルの追い上げにより浸食されていく
川下: 時間とともに、顧客数の増えるにつれて、競争優位は強化される。強みは蓄積される。フェイスブックの例
ウェブ上にアカウントを持つ10億人の人たち。ネットワーク効果。
ネットの代表的な「広場」としての地位を守るため
データを移植させない / タイムライン / イベント / ゲーム / アプリ
すべてが「定着」を促す要素ネットワーク効果の本質は、その蓄積性にある。
オリカの例
気づき
顧客が、爆薬の安全な輸送・保管についてはもちろんのこと
事故を起こさずに爆薬を扱えるかどうかを口には出さずとも心配しているようだと気付く。目的
もしそのリスクやコストを少しでも計画的に削除できれば、
採石事業者に対して大きな新しい価値を提供することになる実行
さまざまな採石業者の何百という爆破案件のデータを収集し
爆破結果を左右する要因の理解につながる驚くべきパターンを発見提供した価値
爆破結果を特定の許容範囲内に収める保証をしたその後
競争優位を築いただけでなく、優位性は時間とともに蓄積した。
データが増えていくにつれて爆破予測の精度があがり、競合他社への優位性が高まる。競争相手を選べるか
3つの重要な意思決定によって、誰と競争するのかを決められる。
1)自社の製品・サービスを顧客の意識の中にどう位置づけるか
水分補給飲料: 胃腸疾患の回復期に飲む、アスリートが休憩時に飲む、二日酔いの人が飲む
顧客が認識するベネフィットが違う
2)流通チャネルのなかで自社を競合他社に対してどう位置付けるか
ブリタニカ: 浄水器をスーパーマーケットのミネラルウオーターの横に置く
1ドル当たり数ガロン多い浄水を提供できるためコストメリットがある
ヨーグルト: ほとんど同じで、差別化要因がない
3)価格をどう設定するか
インフィニティ: G35をBMW3の対抗車として選んだ、適切な価格設定をすることで
BMW5の顧客は、BMWを持っていた人や非常に高価で、ブランドの名声と価値提案を求めている。
BMW3の顧客は、検討する上で価格を主な基準にする。川上以外のイノベーション ヒュンダイの例
ほとんどの自動車メーカー: 価格を下げ、キャッシュ・バック、ディーラー・インセンティブという値下げ
ヒュンダイ:
見込み客になぜ買わないのかを尋ねた。
金融危機で、いつ職を失うか分からない時に車の購入はリスクが高いと考えていた。
プラン: 購入後1年以内に、職を失った場合、無条件に(信用格付けを損なうことなく)車を返還できる
→ 業界が37%の売上ダウン。ヒュンダイは、売り上げは倍増。よりよい自動車を売るためではなく、自動車をよりうまく売るためのイノベーションを起こした。
顧客のコストやリスクを削減することになった。
フェイスブック: 友達と交流するコストを減らした。
オリカ: 爆破に伴う採石業者のリスクを低減した。
コカ・コーラ: 喉が渇いたときに冷たい清涼飲料水を見つけるコストを減らした。イノベーションの速度はR&D段階で決まるのか
製品・技術の向上が市場で有効となるのは、川下の競争優位を覆すときに限られる。
競争相手による新製品の発売や新機能の導入をいちいち気にかける必要はない。
注意が必要なのは、顧客の購入基準に対する支配権を奪おうとするものだけ。ジレット: 市場がいつ次世代のかみそりと刃へ移行するのかをコントロールしている。
競合他社は、ジレットが刃が一枚追加されることを知っていた。ただし、どこもしなかった。
理由は、先取りしても得られるものがないから
顧客の購買基準 - 顧客の信頼 - は、ジレットが握っていたから
追加の刃が信頼され実質的に有効となるのは、ジレットが発売を決め
マーケティングをしてからになるから。
ジレットがそれを認めない限り、事実にはならない。
業界のスピードを決めるのは
技術改良でなく マーケティングの力市場の変化
進化的な変化
既存の購買基準の枠組みが押し広げられる
→燃費の向上など世代的な変化
古い基準を補完する新しい基準が導入されるときに起こり
新しい市場セグメントの開拓につながることが多い
→無糖ソフト・ドリンクなど革命的な変化
新しい基準が導入されるだけでなく
それによって古い基準が陳腐化する時に起こる
→タッチ・スクリーン、マルチタッチインターフェイスはスマートフォンに期待するものを変えた大変さ
進化的な変化<世代的な変化<革命的な変化
顧客の購買基準を変える
市場を変化させるうえで、技術は必要だが十分条件ではない。
顧客に進化的、世代的、革命的な変化を経験させるのは川下の活動である。
重心の位置が変わった
価値と競争優位の重心は、企業の内部から市場へと移り始めている。
顧客のコストやリスクを減らして支持を獲得し、揺るぎない差別化要因を打ち立ててライバルを撃退する。